物語のなかをぐるぐる廻る

すきなものをならべていく

1年謳歌してみて書く、電子書籍生活のススメ

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わたしが増税前に駆け込みでiPad miniを買って電子書籍生活を始めてから1年。まだまだ周りでは「電子書籍っていいの?」って人がほとんどなので、生活の変化と電子書籍生活のメリットとポイントを書きたい。
個人的には電子書籍万歳! 元々紙の本大好きで、紙の匂いも書店も大好きで、一番最初は「えー情緒がなくない、装丁も……」とか思ったタイプでしたが、今では買う割合は完全に逆転しています。その理由。

保存状態が圧倒的にいい

とにかく第一に来るのがこれ。ブックオフより新品派な人はいちばんここにくらっとするんじゃないかと思う。小学校のときに買った漫画が久しぶりにみたら黄ばんでる……とか、ページをひらいてみたらべりって言って1ページ外れそうとか、そういう現象は絶対にない。いつ読んでもどんな手で触ってもきれいなまま。黄ばむのも古い本の匂いも嫌いじゃないけど、それはわたしの中ではあくまで図書館とか古書店が好きって意味であって、自分のものならきれいなものを手元に置きたいタイプで、家にある本も日焼け防止でカバーをかけてるから、本当にありがたい。

さらにそれ以上に幸せなのが、整列が美しいこと。アプリを開くと、グリッド上にきれいに並ぶ。実本だと棚に入れちゃうと背しか見えないけど、表紙を並べられる。棚に綺麗にならべたい、ずらっとそろってるのが気持ちいい、そんな人には実本より電子の方が快感かもしれない。1、2冊しか買ってなかったときはそんなにぴんとこなかったけど、ずらりと並んだら見てるだけで幸せになった。好きなものばかりが並ぶ空間だし、「どこにしまったっけ?」みたいな整頓の問題もない。kindleだったらタイトル順や著者順に並べてくれる。漫画ばっかり買ってるせいもあるけど、カラフルで楽しい。

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とにかく、安い

出版業界的にこれがいいことか悪いことかみたいな話は置いておいて、あくまで消費者としてはかなりありがたい。デフォルトで数十円〜数百円電子のほうが安いタイトルもあるし(ただし、今後はたぶん紙と値段が並んでいく動きが多そう)、セールがある。紙の出版物は日本では再販制度が敷かれているから、まぁ厳密にはバーゲンブックとかあるものの、基本的にいつどこの新刊書店で買っても同じ値段。でも、電子は書店ごとにセールをしていたり、その時期もまちまちなので、上手く狙って購入すると安く買える。

1冊でいい

バタバタしているときにありがちな「なんか電車内で読むもの欲しい…けど選んでる時間ない!」みたいな現象や、「後で何が読みたくなるかわからない」みたいな気持ちや、「道中ずっと退屈しないためには5冊くらい持ち歩かないと……」な問題を解決してくれる。出掛けるときに、それひとつ(わたしの場合はiPad mini)を迷いなくつかんでいけば、基本的に出掛けた先で読みたいものを決められるし、やっぱやーめた、も簡単だし、重さが増えていったりしない。分かりきっていた特徴だけど、なんだかんだものすごく便利だ。わたしは暇になるのが不安で必要以上に持ち歩く子だったから、とりあえずひとつあれば読み終わっても続きにも他のタイトルにも行ける安心感は大きい。

 

と、ここまでだと「そうでしょうとも」って感じも大きいだろうから、結局どうするのがいいのか、今日現在のわたし的電子書籍入門。

どのストアで買えばいいの?

これはまた出版業界的にはいいこととも限らない部分ではあると思うけど、Amazonがなんだかんだ強い、と思う。これが消費者としては最も痛いところのひとつだけれど、今の電子書籍は音楽みたいにファイルを自分の機械のフォルダの中に落とす形式ではないから、それぞれのストアで買うと、それぞれのサイトもしくはアプリでしか読めないAmazonで買えばkindleアプリ、楽天ブックスで買えばkoboアプリ。写真みたいに、どのカメラアプリで撮っても同じフォルダに保存されていくわけではない。

だから、バラバラなストアで買うとそれぞれのアプリを開くことになる。それはそれで別にそれだけなのだけれど、家の本棚にいくつも扉があるみたいなことは基本的にないわけで、同じ本棚に並べたい人もいると思う。わたしは統一したくて、すでに買い始めてたものの続刊以外は、全部kindleにした。

Kindle 電子書籍リーダー

Kindle 電子書籍リーダー

  • AMZN Mobile LLC
  • ブック
  • 無料

そのときなぜkindleを選んだかというと、

  • 一番安くなるチャンスが多いから
  • 一番品揃えがいいから
  • 一番大きなシェアだから

の3つの理由。

「安くなる」に関しては後で触れるとして、下2点。品揃えとシェアは似ているけど、「シェア」で言えそうな大きなメリットが、「なかなかなくならない」ということ。音楽は、ダウンロードしてしまえばたとえ配信会社が潰れようと自分の手元に残るけれど、今のところ電子書籍は、それぞれのアプリが「サービスを終了します」と言い出したら打つ手がない。雑誌みたいに次々読んで通過して行くイメージよりも保存性を大事にしたい人は、シェアが大きいところで選んだほうが、なくなる可能性は低い。

下のリンクのヤマダ電機のニュースみたいに、採算が取れないと突然「閉鎖!」となる可能性もあるけれど、電子書籍全体にとってその問題は今後の課題だろうし、そのときAmazonくらいの規模だと対応がされることに少し期待できる気がする。

 

また、ユーザーが多いと、その分情報が多い。

この『きんどるどうでしょう』さんみたいにkindleのセール情報をまとめているところもいくつかあるし、自動通知botみたいなものもある。使っている人が多いほど、そのユーザーに向けたサービスが増えていて、セールなんかを逃さずキャッチできる。

こんな風に、kindleは圧倒的に「安い」に出会いやすい実感がある。月替わり/日替わりのセールもAmazonが実施していたり、きちんとしたデータは取っていないけれど、セールの規模や開催数自体も多いように思う。他の電子書店もセールを行うけれど、その書店独自のポイント還元とかではない「値引き」の場合、大抵Amazonも同時期に値引きを行っている。LINEマンガやkoboのプッシュ通知・メルマガ等で得たセール情報を元にAmazonを見に行くと安い、というキャッチの仕方も存在する。

Amazonは直接値引き以外にも「20%ポイント還元セール」のようなキャンペーンが多くて、これがかなりポイントが貯まる。高額なものほどいいから嬉しい。

ただ、もちろんAmazonが何もかもを網羅しているわけではないし、おそらく常に変化していくし、それぞれの書店にはそれぞれのオリジナルのキャンペーンが存在していて、面白い。とあるコミックが1時間ごとに1巻ずつセールになっていって、起き続けていないと全部を安く買うことはできない耐久レースのような仕掛けや、書店オリジナルの特典がつくパターンもある。BOOK☆WALKERなんかは、定型にしか置けないスクロール型のkindleとちがって、自分で本棚をページごとに管理し、好きな背景を設定できるようになっている。たまに、1巻購入特典でその作品オリジナルの壁紙プレゼント、みたいなことが行われていて、コミックやライトノベル好きにはこっちのほうがお得感がある人もいると思う。

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BOOK☆WALKERのアプリ画面。背景やサムネイルのサイズを選べる

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個人的には、BOOK☆WALKER(左)が壁紙設定できるようにしている故に、横置きにするとこうやって一気にダサくなるところが嫌だったというのもkindle(右)にした大きな理由。目に入るものの美しさは大事。

BOOK WALKER (電子書籍)

BOOK WALKER (電子書籍)

  • BOOKWALKER
  • ブック
  • 無料

 

まずは漫画と雑誌から

でもやっぱり戸惑いがあるなあ、という人には、個人的には「漫画」か「雑誌」から始めるのがおすすめ。このふたつは確実にレイアウト改変がないです。

電子書籍の利点のひとつとして、「好きな字の大きさで読める」というものがあって、目が悪い人にとっては読みやすいし、どの大きさのディスプレイで購入しても適当な字の大きさを指定できるから、「いちいち拡大しないと読めない!」みたいな事態にならないのだけれど、イコール、著者や編集が意図して作った文字組や行間などは反映されないし、それによってページ数も変わっていく。どのくらいまで来たのか、が実本より分かりづらくなる。

その点、漫画や雑誌、写真をふんだんに使う実用書なんかは、レイアウトが崩れたら読めないので、ほぼ「本をそのまま電子にしただけ」の状態になる。捲り方が違うくらいの相違で違和感は最小限だから、初めて電子を買う人にはおすすめ。

ここが個人的にはすごく大事なのだけれど、文字の大きさだけじゃなくて、フォントも選ぶことが出来る(もしかしたら、種類はアプリによる)。でも、ということは、それぞれの文庫レーベルのフォントではないし、単行本ごとに合わせて選ばれたフォントでもない。どの書籍を買っても、せいぜい2つか3つくらいのフォントでしか読めなくなります。フォントラヴァーとしてはかなり痛い。本はやっぱりフォントも級数も(ほんというと紙質も)合わせてプロダクトだから、というふうに思っていると、紙質というものが存在しなくなる以外に痛いのはこれだと思う。電撃文庫を好きだった理由の4割くらいは愛する「石井細明朝体 オールドスタイル大がな」だったのに、今電子でもう一度買ってみても、そのフォントでは読めない。ここが一番、電子書籍になんとかしてほしいところ。

個人的な感想では、参考書など、書き込むものは向かない(あまり電子化もされていない)。栞をつけることが出来たり、そのまま引用もできたり、様々な機能があるけれど、いまのところ、きちんと身体に取り込んでいくために線を引きながら読みたい、みたいなものは紙に手を動かしたほうが向いているように感じる。自己啓発とかも、ぼろぼろになるまで読みたい、みたいな場合は紙の方がいいのかもしれない。

文字ものでは新書が最も向いているかも。情緒やデザイン性を求めなくてよくてフォントへの拘りみたいなものも生まれにくいし、時事が絡むものが多く基本的に安く買って次々読んで行く特性と合う。

「安くなる」で生まれる現象

電子書籍になって一番変わったのは、「買うもの」。今まで書店をうろうろしながら「う〜ん」って思っていたグレーゾーンのものに、比較的手が伸びやすくなった。ほしいものリストに入れておいて、セールになったら買えばいい。割引によってスポットがあたって、結構前に発売されたものがぐんと伸びたりする現象もここから起きていると思う。今までは文章を読むタイプのものは9割図書館で借りていたのに、「図書館行くくらいなら電子で買おうかな」という気持ちも出てきた。動かずに待たずにワンクリックで買える楽ちんさを無料貸し出しと天秤にかけるようになったのは自分でもちょっと意外だった。Amazonだと、ポイント還元セールで得たポイントで、「実質タダ!」と思ってグレーゾーンのものに挑戦することも多い。

もちろん大人買いも増えた。コミックとかだと、アニメ化きっかけや、会社ごとのセールなんかで、シリーズまとめて割引になっていたりするから、そこで一気に買う。昔読んでもう手元にないものなんかもいくつか買った。長くて買えないと思っていたシリーズほど、安くて場所をとらないのはありがたい。

ただ一方で、大人買いは迷わなくなるけど新刊は迷うようになった。いつかセールするかもしれないから。どうしても今すぐ読みたい、気になってしかたないもの以外は、いったんとりあえずほしいものリストに入れるようになってしまって、セールの威力を感じる。話題の新刊についていけなくなるのは本当は嫌なのだけれど、そもそもサイマル配信がまだ整いきってないから、実本の2〜3ヶ月後に発売だと、まあもういいか安くなったときで、ってなってしまう。ここは出版社の課題だと思う。サイマル配信かどうかは、作成の難易度や著者の意思もあるだろうし、会社やレーベルによっても違う。

でもなにはともあれ、出会いは圧倒的に増えた。電子じゃなかったら買わなかったものが手元にいっぱいあるのはすごくうれしい。

まだまだ発展途上

電子はまだまだ発展途上で、きっとこれからサービスも変わっていくと思う。フォントもなんとかしてほしいし、たとえば雑誌の商品紹介ではそのままその商品を注文できるとか、ボイス特典が付いてるとか、そういう電子ならではの開発も進んで行くんだと思う。

地味に不満なのが、印刷で原価を圧迫しなくなったんだから、元がカラー絵のものはカラーで載せてほしい。あと、カバーの折り返しの内側(よく著者のコメントとかが載っているところ)とかカバー外した表紙とか、そういうものは見られないことが多いから、そこも全部載せてほしい(スクエニさんは、比較的全部見られる。やさしい)。

今のところ貸し借りもできない。よく「これ面白いよ!…ごめん、電子で買ったから貸せないわ」ってやりとりになってしまう。この間はiPadごと貸すはめになった。この機能はいずれついてくるのか、はたまた、個人間はもはや視野にいれず、サービスからのレンタル機能のみになるのか。

サイン会ができないのも気になる。「●●の5巻ご購入の方に」とか言われると、5巻だけサインのために実本を買うのは嫌だなあ、ってなってしまうから、今後はイベントの行われ方なんかも、ちょっとずつ新しいものが出てきてほしい。

とはいえ、そういう発展途上だったり若干残念なところを含めても、 電子万歳! 今は電子書籍のない生活は考えられない。好きなものをいっぱい詰め込んだ4次元ポケットみたいなデバイス、宇宙感ある。物語の宇宙を持ち歩くのだ。