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物語のなかをぐるぐる廻る

すきなものをならべていく

地上で一番幸福な映画、『バケモノの子』

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細田守最新作の『バケモノの子』、見てきました。土曜日、舞台でもある渋谷にて。

母親が死んでひとりぼっちになった少年・蓮は、渋谷を彷徨ううち出会ったバケモノ・熊徹を追いかけ、バケモノの世界で生きていくことを決めます。人間界の【渋谷】と隣り合わせに存在するバケモノ界【渋天街】。熊徹は渋天街でもっとも優れたバケモノであると認められるため、蓮を弟子に取ろうとし、9歳だった少年に「九太」と新しい名前を授けました。

ふたりは喧嘩ばかりの毎日を過ごしますが、九太の素直さに支えられて、師弟の関係を築いていきます。

いやあ、これは正真正銘まさしくエンターテイメントだなあ、というのが見終わった一番の感想だった。ずっと楽しい。どきどき、はらはら、好感、そしてハッピー。そんなテーマパークみたいな映画。個人的にはエンターテイメントとは呼びづらかった前作『おおかみこどもの雨と雪』とは打って変わって、楽しくなるために見る映画だった。

 

考えさせられる作品や議論を呼ぶ作品にしようと思えばできた設定がいっぱいあるのに、今作は一切その要素を排除しているんだと感じた。ジャンプみたいな、どこまでもまっすぐで前向きな作品になるように。

母親が死んで一人になった子どもが親戚の手を逃れてひとりで渋谷をさまよっていることも特に問題にならずにさらりと過ぎるし、そこで熊徹というめちゃくちゃいい人に出会ってその人が食わせてくれておまけに強くもしてくれて、バケモノの世界なんて言っても全然危険じゃなくてバケモノが全然怖くなくて、危険も貧困もなく、九太は健康に育っていく。多少いじめられるシーンとかがあったけれど、それも熊徹と一緒に強くなることによって、次のシーンでは解決される。

これは多分、ひとりになった子どもが掴み取る、もっとも幸福なかたちの暮らし。もう、日本で、東京で、普通に暮らしてるこっちが羨ましくなるほど、心身ともに健康で、じゃあそれがものすごくファンタジーで嘘くさく見えるかというとそんなことなくて、九太の素直さと努力で掴み取って行っているように描かれているから、よかったねって思って応援してしまう。現実はきっともっと難しいのに、地上で見られるもっとも幸福なかたちを描き続けてる。

 

17歳になった久太はある日、偶然【渋谷】への道を見つけて人間界に戻ります。「もしやここで浦島太郎みたいなことに……」とか「バケモノに育てられてるからここから苦労するのかな……」みたいな心配も一瞬で吹き飛んで、いろんな人間界のことや読み書きを教えてくれるかわいい女の子と出会う。父親とも再会して、「お前なんか知らん」とか言われることもなく、「探してたんだ」と言われる。ハッピーすぎる! でも、すべてがものすごくテンポよく進むから、そのハッピーを楽しく受け入れて、あぁ楽しかった! と言って見終われる、最上級のエンターテイメント。幸福な気持ちになるための映画。

こんなにうまくいくかよー! とか突っ込むことすら無意味に感じる。だって登場人物を好きになってしまうから。すべてがベタなんだけど、それの何が悪い!ってさせられてしまう力がある。久太にも熊徹にも会ってみたくなってしまうのだから、つべこべ言うより楽しかった!でいいんだと思ったら妙にほっとした。友達同士で見ても、子どもと見ても楽しい。

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3連休初日の渋谷は大人も子どももいて満員だった

 

この映画はエンターテイメントであるために、誰もが楽しめるものになるように、わかりやすくなければ、ベタでなければならなかったんだ、とたびたび感じた。
広瀬すずさん演じる楓の「私は自分のやりたいことを見つけるの」みたいな台詞とか「みんな苦しいよ」みたいな台詞は真正面すぎて浮いているくらいだったし、第2、第3の父母のような多々良と百秋坊の「嬉しいんだよ」「成長したな」みたいな台詞で熊徹と久太の関係の変化に丁寧に解説が入っていた。鬱陶しいほど説明的なわけではないけれど、それをカバーしているのもやっぱりテンポのよさとキャラクターだった。

少年期の九太の宮崎あおいさんと熊徹の役所広司さんの言い合いの掛け合いがすごく上手で、宮崎さんは特に普段のイメージと全然違ったから感動だった。広瀬すずさんと染谷将太さんはすごく本人だと分かって声と喋り方に特徴のある引力の強い役者さんなんだなと。反対に大泉洋さんは全然ご本人らしくなくてそれがすごくよかった。そして何よりリリー・フランキーさんがいい声すぎてくらくらした。

あと、やっぱりすごく嬉しかったのは渋谷がものすごく細かいところまで再現されていたこと。看板とかまでそっくりで、わー!わー!と喜んでしまいました。

 

こうやっていっぱい愛された子は、どんな苦労も乗り越えられるし、この先も前向きで幸せでいるんだろうな、と思いながら劇場を出るのは、安易かもしれないけどやっぱり気分が良かった。今日は楽しいことしたいな! って日に、真夏のお休みの日の昼間とかに、DVDになったらまた見たい。

www.bakemono-no-ko.jp

バケモノの子 (角川文庫)

バケモノの子 (角川文庫)

 

 

もうすぐ展示も始まるみたいだからそれも楽しみ。なんとチームラボとカヤックということで。行きます。