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ステージにあがることの煌めきと絶望のすべて/加藤シゲアキ『ピンクとグレー』

2016年1月9日からロードショー。NEWS加藤シゲアキさんの『ピンクとグレー』を読みました。何作も出されているから少し気になっていたのが、菅田将暉くんが出ると聞いて映画を観に行くことにして、その前に原作を知りたくなったので。

ピンクとグレー (角川文庫)

ピンクとグレー (角川文庫)

 

アイドルが書いた、というと様々な色目で見られてしまいそうだけど、その必要はない、本当に真っ当で、感情豊かで、驚きに満ちた作品だった。
優しくて気弱に見えるのに頑固で鋭い感性を持った「ごっち」こと真吾と、少しぶっきらぼうだけど頼れるところもある「りばちゃん」こと大貴。性格の違うふたりは惹かれあい、親友になった。ふたりで芸能活動をスタートするが、ごっちだけがスターの道を駆け上がっていき、ふたりは決裂してしまう。数年後のある夜再会するけれど、その翌日ごっちは首を吊り、僕・大貴はその第一発見者となった――。

すごいのは、この物語は、ただ単に親友が死んで悲しい、ということを描いたものではなかったことだと思う。前半は正直進みが遅くて、幼少期の出会いから学生時代の様々な小さなエピソードを意味もわからないまま読むことになるのだけれど、「ごっち」が死んだその瞬間から、すべてが渦を巻くように動き始める。丁寧すぎる表現がまどろっこしいと感じていた前半が突然生きてきて、ずっと本を持つ手を緊張させながら読んでいた。

映画のwebサイトのイントロダクションでは「現役アイドルが芸能界の嘘とリアルを描いた問題作は」と書かれているけれど、これは決して芸能界の嘘とリアルなんて小さな範囲の話ではなく、ステージにあがることの煌めきと絶望のすべて、そして、他人であるはずの愛する人に期待したり要求したりすることを描いた作品で、美しく生きることはステージとリンクし、愛することを前にしてステージは一層輝いていた。本当に誰かを愛したらこんな風になるんだろう、という姿を登場人物の誰もが持っていた。

ネタバレになってしまうので詳しくは書かないけれど、「切り替わった」その瞬間が身体に残るみたいに衝撃的で、なんども確認して感嘆してしまった。実にさりげないのに、確実に残る違和感と不安。ああ、これはもしや、と頭によぎりながらも、文字を目が追うのを止められない。「ごっち」の美しい生き方を辿りながら選ぶ、彼の美しい生き方を見届けないといけなくなる。そこからラストまでは本当に息も止めて読んでいたような気がした。

面白かった。なんだか、この本はいつか読み返す気がするし、加藤さんの他の作品も読んでみたい。

ピンクとグレー

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