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世界平和に一番近いところ――なんでもないのに、ふたりならではな恋人たちの日常『眠くなる前に話したいことがあと3つあって』

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昔と違って今は、雑誌に連載されればほとんどの漫画が単行本となって発売されるから、本になって嬉しい、という感覚はとても新鮮だった。出版社を通していない、バーコードのない本。迷わず通販サイトに飛んで、注文フォームを埋めていた、そんな、ずっとファンだったWeb連載漫画を紹介する。

はしゃさん( @hasya31 )という方が描いた、とある実際の恋人たちを原案にしたなんてことのない日常。『眠くなる前に話したいことがあと3つあって』。

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本当になんでもないシーンなのに、この「毎日」は、とんでもなく特別だ。恋人だったり友達だったり家族だったり、もちろん人間関係の織りなす時間は誰にとってもかけがえのないものだけど、その意味以上に、このふたりの時間は特別素敵。

絶対ちょっと変だし、不思議だし、個性的で、おかしくって面白いけど、ほっこりして、時々ほんのちょっぴりだけ切ない。どの言葉もひとつを選んでしまうとアンバランスでキャッチコピーにならない。なんでもないのに、ふたりならでは。恋人って、どの組み合わせも同じにはならないのだけど、このふたりは、この掛け合わせだからこそ、ふたりが手をつなぐからこそ、生まれる言葉や空白の時間があって、それが本当に本当に、最高だ。なかなかこの会話には辿り着けないことが、少し覗き見るとすぐに分かる。

http://nemurumae.tumblr.com/post/134986905832/2230-2013年4月30日
http://nemurumae.tumblr.com/post/130337008597/820-2013年4月23日

 

ふたりは、歯を磨くことも、朝起きることも、料理をすることも、でかけることも、だらだらすることも、全部ことば遊びをするように、楽しく、かわいく過ごす。この「恋人さん」のセンスと謎の女子力の高さが大きな鍵に見えるのだけど、彼と一緒にいる彼女もその掛け合いに応戦している。

http://nemurumae.tumblr.com/post/127792387452/2022-2013年8月25日

 

もしかしたら、仲良しのカップルの話なんて読んでいられるか! という人もいるかもしれないけれど、この漫画は嫉妬や羨望みたいなものはぴょーんと飛び越えて、こっちの脇腹をくすぐってくるみたいにふわっと距離を詰めてくる。突然道端でこの「恋人さん」に飴玉をもらったみたいな、「そりゃどうしたって機嫌良くなっちゃうよ!」っていう感じのパワーがある。今日がいい日になってしまう。きっと世界平和に一番近いところに、恋人たちはいるんだと思う。

 

漫画担当のはしゃさんが作り出す景色や空気も、このふたりの彩りになっている。木々や、風や、日差しや、街を歩く人の声。1編ずつ違うコマ割りと切り取りの緻密さが好きだ。

http://nemurumae.tumblr.com/post/124320083612/1916-2013年2月6日
http://nemurumae.tumblr.com/post/132660579192/1448-2014年11月2日

 

単行本はこちらのストアでも購入できるほか、一部書店でも委託販売が行われている。

hasya.booth.pm

 

多分これからはもっともっと、Web上で面白い作品に出会える時代になっていく。でも、アップされたものはいつ消えてしまうかわからなかったりして、作者さんに還元する方法もあまりなかったりして、だからこそ、こうして本になったり電子書籍になったりして、購入できるってことの嬉しさを改めて感じられる気がする。
ちなみにこの作品は、Tumblr等で読める部分以外にも40p以上の描き下ろしが追加されている上、ひとつひとつにタイトルがつけられていて、デザインも素敵に組まれている。ファンにとっては嬉しすぎる。

これからもこんな素敵な時間が続きますように。できることならそれをまた、ディティールまで惚れ惚れとしてしまうはしゃさんの漫画で読みたい。