物語のなかをぐるぐる廻る

すきなものをならべていく

『夕暮れライト』みたいに、帰りたい家があるっていいな

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ごくごく普通のなんの変哲もない家に生まれて、わたしにとって家は、「帰りたい場所」だったかというとそうでもない気がする。むしろ、学校とか遊びとか、「行きたい」の気持ちの方が圧倒的に強くて、思い入れのほとんどは家の外にあった。今の一人暮らしの家は大好きだけど、「誰かがいる家」とはやっぱり違う。
夕暮れ時になって、日が沈んできた町に、ぽつぽつと家の灯りがともる。それを見ていたら帰りたくなる――そんな瞬間をテーマに書かれたのが宇佐美真紀さんの『夕暮れライト』(全5巻)だ。

夕暮れライト(1) (フラワーコミックス)

父親が再婚を考えている相手が住むマンションに引っ越してきたちなみは、再婚相手の娘・和音と、和音の隣に住む相馬兄弟に出会う。再婚相手と和音を家族になれる人なのか見極めようとするけれど、逆に相馬兄弟がちなみのことをリサーチしてくる。

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和音を守るために警戒する相馬兄弟(1巻69ページ)

はっきりものを言う性格で一人になっていたちなみと、控えめで大人しいせいで一人でいる和音。余計な仕事を押し付けられていた和音を守って啖呵を切ったちなみに、和音は惹かれていく。強がってなかなか素直になれないちなみも、和音と姉妹になることを嬉しく思うようになる。相馬兄弟も和音を守ったちなみのことを認めていって、4人は微妙なバランスの中で仲を深めていくけれど……。

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啖呵を切るちなみ。こういうこと言ってしまうのが分かる人には絶対ささる(1巻49ページ)

 

いきなり、この間まで知らなかった人と家族になるのは、簡単じゃない。恋をするのも、簡単じゃない。うまく言えない言葉や、傷つけないために飲み込んだ気持ちがあって、そんなとき、隣にいてくれたことは、きっと、その人を信頼するには充分だ。

日が沈むまでただしゃべったことや、教科書に落書きしあったこと、同じ音楽が好きだったこと。手をつなぐとか抱きしめるとかそんなことしなくても、その日の嫌なこと全部ふきとばすくらい嬉しい小さな瞬間があったことを思い出す。宇佐美さんの描くときめきは丁寧でとても好きだ。

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雄大との河原。(1巻43ページ)

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奏多との河原。(3巻96ページ)

柔和だけれど陰のある兄の奏多、強くて優しい弟の雄大。タイプの違う兄弟に振り回されながら読むのもやっぱり少女漫画の醍醐味。恋愛がどうなっていくのかはここではネタバレしないけれど、宇佐美さんの描く絵は品があって綺麗で、男の子には上品な色気があって、腕や手とか、大雑把にきたTシャツまでかっこいい。

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少女漫画のときめきってやっぱり絵も大きい(1巻124ページ)

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扉絵は本当にどれも可愛い、この手最高だ(2巻6話扉絵)

 

誰かに会えるから、家に帰るのが楽しみになるのっていいなあ。きっと悲しいことがあっても、またちゃんと帰りたくなる。隣にいてくれる誰かが、自分の大好きな親友と頼りになる男の子だなんて最高だ。ほっこりして、時々じんわり涙がにじむ。これからの空気がひんやりしてくる季節、ほっとしたい人はぜひ。 

夕暮れライト 1 (フラワーコミックス)

夕暮れライト 1 (フラワーコミックス)

 

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