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「映画に傷つけられたい」/『BRUTUS』2015年の映画特集を考えよ

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課題が出てからちょうど2週間。

昨日が菅付雅信さんの編集スパルタ塾の2回目で、「『BRUTUS』2015年の映画特集を考えよ」に対する回答をプレゼンする日だった。

前回の講義の翌日からわたしがまず取り掛かったのは、とにかく「調べる」ということだった。わたしは圧倒的に「映画素人」で、年に5〜7回くらいしか映画館に行かず、DVDにいたってはほぼ全く見ないという毎日を送っていて、明らかにコアファンがいることがわかる「映画」に対してはかなり不利だと思ったから。(なんせ、スピルバーグの名前はわかるけど作品は3つ挙げられるか不安、といった具合……)
おまけに『BRUTUS』についてもつまみ食い読者で、雰囲気はわかるけど構成まで意識して読んだことはない、という感じだった。

限られた時間で勉強しようと思ったので、取り寄せたのはこの4冊。

BRUTUS (ブルータス) 2011年 12/1号 [雑誌] BRUTUS特別編集 合本映画特集 (マガジンハウスムック) BRUTUS (ブルータス) 2014年 12/15号 [雑誌] BRUTUS (ブルータス) 2015年 1/15号 [雑誌]

読書入門の号も買ったのは、映画特集の中に出てくる人名やタイトルはちんぷんかんぷんだろうと読む前から予測できたからだった。本なら多少は詳しいから、これを読むことによって、どのくらいのマニアックさなのか、どのくらいの大物を捕まえているのか、どのくらいひねった問いかけなのか、といった度合いをはかった。

この4冊から、『BRUTUS』が何を大事にしているのかを想像して、どんな構成なのかを勉強して、特集名とその中身の関係性を考えて、その後ろにいる編集の方の表情を想像して、そうしているうちに、「なんだこれ、すごく面白い」と思ったのは、24人のうち2人くらいしか知らない映画監督の特集だった。そこには熱と物語があって、ひとりひとりが死ぬほど愛情をこめていて、あぁなんだ、この感覚ならわたし知ってるな、たまたまわたしが好きだったのは本だったけど、それが映画な人もいるんだな、と思った。

だから特集は、わたしがいつも本を読む理由として言い切っている「傷つけられたい」にした。
『映画に傷つけられたい』

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このあとはものすごい勢いで進んだ。映画には公開期間があるから、雑誌が売り物である以上タイムリー性は多少押さえようと2015年の映画を調べたり、数少ない好きだった映画の監督や出演者を調べるところから始めて、「誰を取り上げてどう示したら、面白くて納得感があるか?」を考え続けた。今回の課題が出る前から、「見たかったのはこれだよ!」の“うれしい”気持ちと「こんなの見せてくれるなんて!」の“やられた!”という気持ちにさせてくれる雑誌だと思っていたから、そうなるように作りたかった。

 

当日、B&Bに着いて、ものすごくおそるおそる発表順の紙を見たら2番目に名前があった。第1回目だったから、まず「ここでこうやって発表されるのか!」と驚いて、嬉しさと緊張が一気に襲ってきた。今できる範囲ではやりきったと思えるまで作り込んだからもちろん選ばれたかったのに、いざ選ばれたら「どうしよう!」と思った。それも2番。

こんなに緊張したのは久しぶりだった。声が震えてうまく喋れなくて焦って焦ってなんとか終えた感じだったけれど、講評の時間ではすごくほめていただけた。あがっていすぎて西田さんの言葉で覚えているのは断片的ないくつかになってしまったのだけれど、「気持ちいいよ」「話が上手」「Book in Bookならアリ」って言っていただけたこと、そして何より、「4年目でこれなら全く問題無い、今日もう帰ってもいいくらいだよ」「新人がもってきたらやらせてみる」「今度やる●●の特集で働いてほしいくらいだよ」「なんで営業なの、編集になったほうがいいよ」との言葉を頂けて、ものすごく幸せだった。途中で色々な派生したお話をしてくださったことも嬉しかった。

 

他の受講者の13名の方のプレゼンも、全然自分とは違って、全く思いつきもしないようなことだらけで不思議で新鮮だった。考えてみれば当たり前なのだけど、みんな違うバックグラウンドを持っていて、映画に詳しかったりそうじゃなかったり、普段の仕事で通ってきた道も違って、そうしたら思考回路もその成果物も変わって来るんだ、と思った。わたしがやってきたこと、信じてきたことは間違いじゃなかったのかな、と思って、ものすごくほっとした日になった。

西田さんは「何年目?」と入社後の年数を聞かれたけれど、わたしが今回注ぎ込んだ力の中に、会社で学んだことは1ミリもない。それにはまったく苦笑するしかないのだけれど。
むしろ、外からやいのやいの言われがちだったり何になるのかわからなかったりするSFCの4年間が、あの頭の体操ばかりしていた日々が、役に立ったのをようやく実感した。あと、サークルのロゴコンペ。絶対最高のものを持って行ってやる、って気持ちで何度もものをつくってきてよかった。
会社で何度お願いしてもクリエイティブの現場に行けなくて、ずっと自信がなかったけど、あぁこっち側を目指してみてもいいんだな、と思えた。早く今の働き方を抜けたい。

 

今回のプレゼンで、光栄なことに、西田さんから賞をいただくことができた。けれど、今回はたまたま「物語」がテーマに絡んでいて、おそらく得意分野に近かったと思う。多分ファッションとか商品案とかになるときっともっとぽかーんとしてしまう。今からちょっと怖いけど、やれるところまで楽しみたい。久々に頭を使った2週間はものすごく幸せな日々だったことをよく覚えていようと思う。