物語のなかをぐるぐる廻る

すきなものをならべていく

「してもらう側」になれない話

それなりに長くつきあっている恋人が初めての一人暮らしを開始して、遊びに行ったときのことだった。「きれいにしてるでしょ?」という言葉の通り、その部屋には遊び程度しか余計なものはなくすっきりとしていて、水廻りも文句なく綺麗だった。

広いベランダ。コンロ2つ。独立洗面台。いつ出してもいいゴミ置き場に、宅配ボックス。ちゃんとしたエントランス。途中でリフォームしているとはいえ築33年になるわたしのマンションとは、床やドアの材質や汚れ方から違った。不自由するほどの不満はないけれど、端っこがひび割れているドアの木材を思い出す。全体的にナチュラルな素材のわたしの部屋が一気に学生の貧乏生活に思えるほど、その床やドアを形成する濃い茶色のつるっとした加工の木が羨ましかった。

ああ、もう6年。わたしは6年、同じ部屋に留まっている。何の進歩もなく。自分で自分にそう言われた気がした。もちろん彼にそんな他意はない。

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日曜の夜、夜行バスで帰ろうとしていたわたしに新幹線を勧め、彼は1万円を出してくれた。実際にこの瞬間が来るまでは、ひとりの負担が増えるのは不平等だし折半してほしいと思っていたのに、その重い重いお札1枚を見て、わたしは内心とても怖かった。

家。快適でゆたかな暮らし。お金。負けたくなかった。男の人に負けないように働いて、稼いで、自分でお金と暮らしを手に入れたかった。そうじゃなくなるのは怖い。だれかにしてもらうばかりになるのは、弱く、自由がなくなることのように思えた。ありがとう、と言って受け取ったけれど、ちゃんと笑えていたか自信が持てない。

誰かの上に立ちたいなんて、そんな自尊心はいいことがない。正確には、上に立ちたいわけじゃなく、負けたくない、なのだけど。普通ならきっと、「生活力のある彼氏♡」って喜ぶところだと思うのに、どうしても先に悔しさと怖さがきた。それは、彼にはまったく関係なく、彼氏とか結婚とかを考えるよりももっと幼いときから、誰にも頼らなくても生きていけるようにならなきゃダメだ、と思ってきたからで、そのためにわたしは受験をし、いい高校いい大学を目指し、それなりの企業に入ってきたわけで、言ってしまえばこれまでの全ての選択はそのためにあったのだった。

父は、「俺の稼いだ金だぞ」「俺の金で買った家だぞ」と言う人だった。その年代の価値観としては珍しくないかもしれない。母は専業主婦だった。稼ぐ手段を持たない母は、好きなものも買わず、高価なものには目もくれず、贅沢もせず、わたしにとってその生活は、とても自由がないものに見えた。
絶対に、「俺の方が稼いでるだろ」なんて言わせないようになってやる。そう思って10歳くらいから勉強してきた。だから怖い。荷物持つよ、も怖い。ここは俺が払うよ、も怖い。「ごめんね、ありがとう」が積み重なった先にわたしに残るものはなんなのだろう。気づいたら何も選べなくなっていないだろうか。

 

この「負けたくない」の気持ちにはかれこれ15年以上付き合ってきたから、すぐに正体がわかった。なのに、それでも今回は不安が消えなかった。友人にぐだぐだと整わないまま不安をこぼしていたら、自分の口から出た言葉に驚いた。「もうわたしがいる意味はないかなって思って」。するりと出てきたのに、最初は出所がわからなかった。その先は見たくない気がするのに止まらない。「1万円もさ、その分何か返せてるなって思えてたら大丈夫なんだけど、そう思えなくて」「部屋も綺麗で、健康に暮らしてて、わたしにできることって何もないんだなって思って」勢いよく滝のように流れていく。

だって、すごく可愛いわけでも、スタイルがいいわけでもないなら、よく男の人が結婚の決め手に語るように「俺は身の回りのことできないからさ」みたいな価値でもなければ、正直、必要性がわからない。 何もかも完璧にされてしまったら、わたしにできることは何が残ってるんだろう。セックスだったら分かりやすい。別にすごく上手くなくても、とりあえず物理的にある程度役に立てる。でもそれは、女性であれば誰でもできる。

「それ以外にも価値あるでしょ」「それは相手が決めることでしょ」のアドバイスも、頭では正しいって分かっているのに、根本的に腹に落ちなかった。家政婦になりたいわけじゃないのになぜなんだ、と考えて登場したのは今度も母だった。自由になるために自分で稼ぐと言いながら、その一方で、母親が家事や人の世話によって価値を出している状況しか見てこなかったから。母がいないと自分のこともできない父を見てきたから。父がスーパーマンになって母が不要になるという構図が、わたしは怖くてたまらないようだった。

役にも立てていないのに、さらに1万も出させるなんて最悪だ。ゼロどころかマイナス。わたしが来なかったら必要なかった出費だ、と思ったら血の気が引いた。してもらうくらいならしてあげる側がいい。自分が「そんなことしてもらえないよ」って思うことでも、する側なら大丈夫だから。アンバランスだと分かってるけど、そのくらいのほうが精神衛生上いい。

 

「自分に価値がないように感じた2日間だった」
お兄ちゃんを長々LINEにつき合わせながらそう言ったら、「そこに価値を見出したら終わり」とばっさり切られた。わかってるよ。
「20歳くらいの男の子を養うか、40歳くらいの人にしようかな」と茶化すと、「20歳が成長したら同じ壁にぶつかるからダメ、その思考回路な限りお前に残ってるのは40どころか50くらいのヘタレなおっさんだけだから」と言われた。ありがたいお言葉はさらに続く。

「頭のいいシカマルみたいな人はちゃんと稼いで上に行ってるよ」
NARUTOのシカマルみたいに、やる気もなくてだめだめなタイプがいざとなるとめちゃくちゃ出来る、みたいなのに弱いと話していたことを記憶していて引用してくる。説得力がすごい。
「シカマルも隊長だもんね……」
「そう。好きとか言っておいて矛盾してる。アウト」
「うう」
「お前はシカマルが強くなったら嫌がってるんだよ」
「Sorry...」
「うむ」
そのあとちゃんとまともなことを言う。
「自分なんてとても相手より上になれないっすー、ってとこから始めな」
まずは仕事の自己評価を下げなさい。なぜなら、根幹で支えてるのが仕事に対する自信だから。ああ、そうか。そうして何もかもを手放して、やっとまともに出てくるのが感謝や尊敬なのかな。「尊敬できる人が好き」なんて言いながら、わたしは尊敬の意味もわかっていなかったみたいだ。

 

呪縛とも呪いとも言うつもりはないけれど、生まれ育った家で身近にあった考え方は、気づかないうちに自分に染み込んでいるらしい。そういうものはきっといっぺんには剥がせないし、すぐには変わらないけれど、少しずつ納得と安心を得ながら、相手への見方も、何を大事にするのかも、変えていかないといけないみたいだ。大事にするのは得意な方だと思っていた。とんだ勘違いだ。
1万円が怖かったのは事実だけれど、それを出してくれる気持ちはちゃんと嬉しかった。「ちゃんと頑張って返すからね」(現金ではなく)というところに、適量の自信を持てるようになれるだろうか。なれるといいね。岡崎体育さんの「式」の老夫婦のような幸せがいいな。

とりあえず、家を片付けて、お金をためて、できたら引っ越そう。何がお返しになるかを探しながら、ひとまずは、楽しく暮らしたい。

 


岡崎体育 『式』Music Video

 

XXL(初回生産限定盤)(DVD付)

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クイック・ジャパン132

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育った環境のお話はこちらも。

lebeaujapon.hateblo.jp

 

『東京タラレバ娘』が最高で最高で最高だった

東京タラレバ娘』という、平成の少女漫画史に残る問題作がある。
連載途中で吉高由里子さん、榮倉奈々さん、大島優子さんという女優陣を中心にしてドラマ化もされてますます話題になったけれど、そもそも1巻が出たとき、連載が始まったときから、日本中のアラサー女性を斬りつけてくるみたいな鋭い言葉たちで一瞬にして少女漫画界の話題の中心をかっさらっていった。
わたしも何人もの友人の悲鳴を聞いた。普段から漫画を読まない子すら知っているくらいの波及っぷりだった。『タラレバ』は、大問題を正面からずいと見せてくる。「結婚したいなら、幸せになりたいなら、今そうしてていいの?」って。

 

物語は2020年の東京オリンピック開催が決まったところから始まる。明確な「数年後」が見えたことで、なんとなく仕事を続けている、みたいなものじゃない、はっきりとした未来を想像する。そのとき、自分は何をしているんだっけ?
主人公の倫子と、女子会仲間の香と小雪は33歳。そもそも、東京オリンピック以前に、この年齢には結婚して幸せに暮らしていると思っていた。

この始まりを見たとき、思わず舌を巻いたのを覚えている。まさに「お・も・て・な・し」がニュースに流れまくっていた頃、当時アラサーに足を踏み入れたばかりだったわたしの同世代からも、「その時には結婚してたい」「子どもと見れていたらいいな」なんてつぶやきをtwitter上でたくさん見たからだ。東村さんはご自身の友人の方々がそう言い出したから書いた、とあとがきに書かれているけれど、コミュニティやクラスタが違っても、あのオリンピック決定にはそういうパワーがあったらしい。

 

倫子たちが日々居酒屋で大量のお酒を飲みながら恋愛ネタで盛り上がり、あることないこと、未来の妄想も過去のちょっとした後悔もないまぜにして滝のように喋っていると、ある日金髪の若い男の子に罵倒される。「オレに言わせりゃあんたらのソレは女子会じゃなくてただの…行き遅れ女の井戸端会議だろ」(1巻41ページ)。そしてこの有名なシーンへと続く。

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(1巻42ページ)

そこから倫子を中心とした3人の怒涛の33歳が始まり、婚活パーティーに行ってみたり相席居酒屋に行ってみたりして、3人は日々HPを削られていく。脚本家の倫子はこの後この若者KEYくんと仕事でも絡むことになったり、その仕事が危機に瀕したりして、そんなとき「仕事がダメでも結婚するもん!」となってみたり、「恋はともかく仕事!」ってなってみたり、キャリアに悩む女性の図鑑かのように、ありとあらゆるシーンが出てくる。

その間に男性との出会いもある。
香は、バンドマンで、細くてキレイなモデルの彼女がいる元彼の「りょうちゃん」。彼女の存在も、香が2番目であることも隠しもせずに、「髪の毛とかピアスとか落ちてないよね?」と確認してくる男。

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(5巻58ページ)

小雪は、居酒屋の常連になった「大人なのに無邪気で礼儀正しいけど人懐っこくて甘えたがりの可愛い男」(2巻108ページ)、丸井さん。ただし妻子持ち、奥さんと別居中だけどその内情は里帰り出産。

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(2巻107ページ)

この二人は浮気だったり不倫だったりとわかりやすくクズなのだけれど、個人的には倫子が出会う男性の「問題点」の描き方が一番説得力があった。顔も体も良くて優しい、映画好きのバーテンダー。完璧で、おしゃれで、そんなこと言うのは贅沢だとも思うのに、話しながら違和感がある。嫌だなと思う会話がある。友人二人も「何言ってるの他はいいんでしょ我慢しなよ」と言うのだけれど、実はこう言う嗅覚こそが、一番「生理的に無理」に近いのだと思う。

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(3巻72ページ)

 

登場する男性陣も「こういう人、いるな〜」という人ばかりだけれど、それ意外にも『タラレバ』は「あるある」「わかるわかる」の宝庫。「出会いがない」と考えるシーンで出てくる「男が皿に乗って回ってくればいいのに」という回転寿司比喩のシーンなんかは分かりすぎて笑ってしまった。なんで社会に出るとこんなに出会うのが難しくなるんだろう。

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(2巻41ページ)

結婚式のシーンもすごい。「わたしは30くらいかなー」なんていう何の意味もない予定の会話が繰り広げられる女子トーク。そしてその年齢の頃合いとか台詞の一つ一つが、実は後ろから見られてた!?と思うくらいのディテールですごい。

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(5巻102ページ)

マシンガントークやタラとレバーの幻覚の説教だけじゃなく、ふわっとしたモノローグまでも抉ってくる。結局何が欲しいとか、今の自分が何にしがみついてるとか、自然に見ないようにしていることを、倫子たちが呟いてしまう。

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(2巻26ページ)

 

これだけ「リアル」だからこそ、現実を突きつけてくるからこそ、『東京タラレバ娘』は常にああだこうだと論じられる作品だったし、その完結が注目されてきた。結婚するのか、しないのか。まるでそこだけ少女漫画の登場人物のようなKEYくんとくっつく、花畑のような展開が待っているのかどうか。
最後2話に見せた「結論」が、本当に本当に最高だった。最高に最高に最高だった。ふんわりと「やっぱり恋も仕事も大事にして生きていこう」とか言って走り出したりせず、いつの間にか主題が遠ざかって「好き」「俺も」とかなるのでもなく、明確で、はっきりとした「ひとつの答え」が作中の正解として描かれていた。

何か出来事が起きた→相手はわたしのこと好きなのかも→じゃあわたしも好きになろう、という順番(あるいはそうなる前から切り捨てるか)でしか動けなかった倫子が辿り着いたのは、誰とくっつくとかくっつかないとか、結婚できるかできないかなんかよりもずっとずっと大事な一つのことで、「結局少女漫画じゃん」とか言わせない、少女漫画を超えた完璧な「大人の決意」だった。
相手がどうかよりも前にまず、自分がどうかなのだ。

女性が自由になろうとしている時代に結婚を押し付けるなんてありえない、と言った意見がネットでもいくつかあった。でも、この作品は、ちゃんと読めば、「結婚しなきゃダメ」なんて一度も言ってない。「結婚したいなら、どうにかしないとダメなんじゃない?」と言ってるだけだ。結婚だけじゃなく、「仕事で成功したいなら」でもあるし「幸せに生きたいなら」でもある。何か望むことがあるなら、そうなるように動かないとダメなんじゃない?って。

誰かへのダイレクトな説教でもなく、ご意見番としてのインタビューでもなく、ひとつのフィクションの中に意見や思想や答えのひとつを混ぜることって本当にすごいと思う。批判も反対もあってもそんなの関係ないんだ、これは東村さんと『東京タラレバ娘』が出した「答え」なんだから。最終話を読んで、倫子の叫びを聞いて、そのパワフルでがむしゃらで美しい終わりに、誰が何と言おうとこの作品が大好きだった、わたしは『タラレバ』から元気をもらってたんだと気づいてしまった。

2巻の時点で何の気なしに言っていたように見えた「欲しいものは愛なんだ」という言葉。これが最後の倫子の答えに見事につながっていて、この作品が最初から一つの芯によって描かれていたことがわかる。東村先生が最初から最後まで作品を通じて言っていたことはたった二文字、太い筆と墨汁で書いておきたくなる「自立」だったのだと思う。

そして幸せとか愛とか、そういうものを真面目に考えてみるのも悪くないし、真面目に向き合わないときっと手に入らないものなのだ。

 

東京タラレバ娘(1) (KC KISS)

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東京タラレバ娘 DVD-BOX

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俺マン2016を発表する

今年も開催されました、俺マンガ大賞2016。

俺マンについて – #俺マン2016 特設サイト

全体の集計はこれから発表されますが、個人的に選んだものを今年も少しばかり。

わたしの俺マン2016!どーん!

そして、これまではマイルール的にハッシュタグ含めて140字以内、ワンツイートでやってたのですが、今年から著者名を入れた分減ったので、おまけのもうワンツイート。

これ含めたら去年までより多いけど、それでも悩みました。今年読んだ漫画は全部で405冊。一昨年306冊、昨年321冊なので伸びてきてる。

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今一番愛しい10作品

今年の1番は何と言ってもこれ。山うたさんの『兎が二匹』

[まとめ買い] 兎が二匹

1度記事も書いてるけど、個人的に新作が豊作だった今年の中でも、本当に本当に良かった。一生殿堂入り。新作が豊富だったと言いつつ一番好きなのは「完結が美しい作品」で、この作品はどの場面を切り取っても完璧でした。終わってさらに美しくなる作品。ああ、いつかこの方と仕事してみたいな。

他の作品も素敵なものばかり。
見逃していて今年初めて出会った継続作品の『カカフカカ』は今一番続きを待っている作品。好きすぎる。ルームシェアすることになった家に行ったら昔の元カレがいて、その人と「添い寝」をすることになる、という話なのだけど、そのあらすじだけでは到底伝わらない気持ちの揺れがすごい。男女両方に勧められる少女漫画。
3番目に挙げたのはジョージ朝倉さんのダンス・ダンス・ダンスール』。この方はなんでこうも、人が一番きらめく瞬間を描くのが上手いんだろう……! 才能に引きずられてしがみついて生きる人たちの物語。実は今年初めて最後まで『溺れるナイフ』を読んで、これが傑作すぎて度肝を抜かれていたのだけど、そこから何年も経って今描かれてるものがこれなんだと思うとくらくらする。
4番目に挙げたのは私の少年。アラサー女性と、赤の他人の小学生の少年との補完関係のような話。おねショタに分類されやすいと思うけど、そんな軽い萌えワードでは説明がつかない繊細さ。これはなんだか新ジャンルな気がする。

カカフカカ(1) (Kissコミックス) ダンス・ダンス・ダンスール(1) (ビッグコミックス) 私の少年 : 1 (アクションコミックス)

少女漫画の新作の中で一番好きだったのはダントツで『素敵な彼氏』。タイトルがシンプルすぎて、女子高生が恋してときめいてって話かなと思っていたら全然違った。誰かを好きになるとかなってもらうってどういうことだっけ、というお題を扱うものは数多くあるのに、どれにもなかった柔らかでピュアな空気感で、おまけにきゅんとさせてもくれるし続きも気になる。ヒーローがあんまり見ないタイプで素敵。
お仕事もので今一番好きなのは西荻窪ランスルー』。高卒で大学進学を蹴ってアニメーターになる女の子の話。主人公は女の子だけど、周りで働く大人たちの葛藤も出てきて、すごくいい。何年も働いてると目的とか自分が何してるのかとかわからなくなることもあるけど、それでも目の前のものを少しでもよくしたい。仕事ってやっぱり戦いだな。
異色なのは『ニュクスの角灯』。これはとにかく中身の細かさというか、少し前の時代の日本にあった珍しいヨーロッパの品々や骨董品なんかがたくさん出てきて、その暮らしぶりやものたちが本当に素敵。1話ごとに丁寧に描かれてるコラムページもそれだけでフリーペーパーみたいなおしゃれさで、ずっと眺めていられる。マツオヒロミさんの『百貨店ワルツ (リュエルコミックス)』とかが好きな人に本当にお薦めしたい。

素敵な彼氏 1 (マーガレットコミックス) 西荻窪ランスルー 1巻 ニュクスの角灯  (1)

自分でも驚いている唯一のBL、『カレは男とシたことない。』は大好きな都陽子さんの作品で、『カレは女とシたことない。 (Feelコミックス)』のスピンオフ。普段BLはよほど話題になったもの以外は読まないのでこういうランキングに入れる日が来るとは思っていなかった……! 『女と〜』の方を先に読むことを圧倒的にお薦めしたいのだけど、このスピンオフも、相手のことを考えて、距離を少しずつはかっていく様子が素敵。この方の感情の描き方がものすごく好きだ。

あとは継続の少女漫画より、高嶺と花『おはよう、いばら姫』を。『高嶺と花』は、御曹司と女子高生というある種の定番設定なのだけど、御曹司が同じ学校にいるわけではなく社会人で、なのに女子高生の方が基本的に立場が上という(笑)すごく楽しい展開。二人のキャラクターがものすごくいい。読むとめちゃくちゃ元気になります。
『おはよう、いばら姫』は特殊な事情で家にほぼ閉じこもっているお嬢様と家政婦として派遣された主人公の話なのだけど、毎巻毎巻、どこかで泣きそうになってしまう。絵も綺麗で、読み終わったあとじんわり「あー今回も良かった」って思う。最近話が動いてきたので、今後が楽しみ。 

カレは男とシたことない。【電子限定特典付】 (onBLUE comics) 高嶺と花 1 (花とゆめCOMICS) おはよう、いばら姫(1) (KC デザート)

なんだか2016年は、いつもよりも一層繊細な気持ちの変化を描いているものに惹かれたかもしれない。ただ、本当はまだまだまだまだ紹介したいものがあって、以下は、収まりきらなかった作品たち。

 

完結作品たち

神様はじめました 25 (花とゆめCOMICS) 俺物語!! 13 (マーガレットコミックス) 富士山さんは思春期 : 8 (アクションコミックス) ハル×キヨ 9 (マーガレットコミックス) ラストゲーム 11 (花とゆめCOMICS)

長く続いてきて雑誌の顔になっていた少女漫画の完結はなんだか寂しいけど、大抵がハッピーエンドなので、めちゃくちゃ幸せでもある。完結の仕方がすごく良かったのは俺物語!!ラストゲーム。ああまた読みたい。神様はじめましたは最初から最後まで大好きすぎたのでいつかがっつり語りたい。『ハル×キヨ』もずっと明るい気持ちで楽しく読める作品で大好きだった。オザキアキラさんはもう新作も始まっているのでそっちも楽しみ。青年漫画では、記事も書いた富士山さんは思春期が良かった。いつまでも見ていたかったけど。

 

安心をくれる少女漫画

高台家の人々 1 (マーガレットコミックス) 椿町ロンリープラネット 1 (マーガレットコミックス) これは愛じゃないので、よろしく 1 (マーガレットコミックス) 取り急ぎ、同棲しませんか?(1) (フラワーコミックスα) きっと愛してしまうんだ。(1) (フラワーコミックスα) 恋わずらいのエリー(1) (デザートコミックス)

今年好きだなあと思った少女漫画はホッとさせられるものが多かった気がする。なんかみんなどこか変だったり、苦労していたり、辛いことがあったりして、だけど誰かと出会って、安心する話。その主人公たちの動きに合わせて、一緒にホッとさせられていた。こんな風に幸せなことがあったらいいな、と純粋に思える、ある意味正統派少女漫画。
高台家の人々は、妄想ばっかりしている女性が主人公。妄想とか天然な人がちょっと苦手なのに、全然イライラしないし笑ってしまって、その彼女がなぜ相手に求められたのかがわかってしまうので、それがすごくいい。なぜかわからないけどモテちゃった!っていうんじゃなくて、ちゃんといいところがわかると安心する。
ひるなかの流星』が大好きだったやまもり先生の新作椿町ロンリープラネットも可愛くて好き。この方の絵は服とか髪の留め方とかまでおしゃれで大好き。『これは愛じゃないので、よろしく』は大好きな湯木のじん先生の新作。愛がどうのとか言ってる女の子をウゼーってバカにしてた男の子の方がジタバタしてるのが面白い。
『取り急ぎ、同棲しませんか?』は今一番シンプルにきゅんとする作品!年下男子がとにかく押せ押せで来るという夢のようなシチュエーションで、いいんですこれは夢でも。こんなこと現実にはそうそうないけど、見てるだけで楽しいから大満足。同じく同居もの『きっと愛してしまうんだ。』は会社の同期同士。相手の気遣いや温度の感じ方の表現が一井かずみ先生は素敵。前作より圧倒的に好み!
『恋わずらいのエリー』は妄想が止まらずtwitterで妄想恋愛アカウントを作っているという現代的な設定。なんとそのtwitterまで実際に用意されてる。一見変態な女子だけど、ときめきの部分は本物だからすごい……。ギャグになりすぎてなくて好き。

 

頭から離れなくなる青年漫画

人魚王子 (ウィングス・コミックス) 応天の門 6巻 (バンチコミックス) あげくの果てのカノン(1) (ビッグコミックス) 恋のツキ(1) (モーニングコミックス)

今年も好きな青年漫画もたくさん。何と言っても一番話題になったのはあげくの果てのカノン。不倫×SFというぶっ飛んだ設定で、主人公のかのんが「先輩」を好きすぎるストーカーなのがネット上ですごく話題になったけど、SF部分もしっかり先が気になる感じで、目が離せない。
恋愛模様という意味では『あそびあい』に続いてヒリヒリする恋を描いている新田章さんの『恋のツキ』。だらだらと付き合っている彼氏にときめきを感じないけど、年齢的にはその人と結婚した方がいい。でも、学生の男の子にときめいてしまって……という出口が見えない感じ。絶望を感じる! アラサーでざっくり傷ついてしまう人もいるのでは……。笑

大好きな尾崎かおりさんの新作『人魚王子』はちょっと不思議な出会いを描いた傑作短編集。前作の『神様がうそをつく。 (アフタヌーンKC)』とはまた違うミステリアスな雰囲気で、もっといろんな作品を読んでみたくなった。
最後は一番応援している作品の応天の門を今年も。菅原道真在原業平のタッグ。読めば読むほど道真を好きになる。去年のわたしの俺マン1位にしたのだけど、継続中の今年も面白かった。それでいうと去年2位にした『波よ聞いてくれ』もめちゃくちゃ面白くて信じられないほど面白くてすごかった。

 

全体の投票はどんな感じになるだろう……!発表は来週14日。楽しみ。

2017年もたくさんの面白い漫画に出会えますように!

2016から、2017へ。

2016年が終わって、2017年が来る。
今年は冬休みが短く感じる。今日でもう終わりだなんて、なんだか信じられない。今年も、また1年を振り返ってみる。

2015年はとにかくぼんやりした印象で、何もなかった気がしたけど、2016年はとにかく派手な年だった気がする。

転職するのをやめた

あくまで一旦は、ということになるかもしれないけれど、これまで4年近くずっと思っていた「転職したい」を思わなくなった。
去年通っていてすごく楽しくて、まるでクリエイティブなことをしているような気になれた塾が終わって、そろそろ本当に転職しなきゃと思って受ければ「この年齢で未経験なら若い子を採る」と言われるようになった。エージェントから「同人誌でもいいから経験したと言ってくれ」と言われて、思いつめて恩師に縋ったら課題をもらって、それをきっかけにいろんなことを考えて、自分のこの境遇は自分にとってひとまずいいものだなとやっと思えた。
今の仕事はやりたいこととは違うけど、向いていることではあって、もし異動してうまく行かなくても呼び戻すと言ってくれる上司がいて、なんだかすごく恵まれてるなと。2年前くらいまでは凄まじかったブラックっぷりもかなり改善して今は無理もしてないし、しばらくいてみようと思う。

 

お兄ちゃんが辞めた

大好きだった職場のお兄ちゃんみたいな存在が辞めた。3月。本当にお兄ちゃんって呼んでいてよく「え、本当に兄弟…?」とか言われてたくらい仲が良かった人。わたしの職場でのモチベーションの8割だったのだけれど、あっさりと転職先を見つけて辞めた。
そうしたら不思議なことに楽になった。「辞めたいね」っていつも二人で言っていたのが、それを言う環境ごとなくなったら、そう思うこと自体が減った。言霊というか、集団心理みたいなものなのかもしれない。マイナスなことを言わなくなったら、やることやるだけだ、って思うようになった。今はたまにLINEとかで話したり、当時の仲間で集まったりできるから純粋に楽しい。

 

徳島と京都とバリとシンガポールに行った

2016年は4ヶ所に旅行した。チャットモンチーのツアーの徳島、それ以外は普通の旅行。シンガポールだけ、父に会うというのと母を連れてくというミッション付き。

https://www.instagram.com/p/BFB0tMvuTp_/ https://www.instagram.com/p/BJouMWRAvBZ/ https://www.instagram.com/p/BKzGb0fgJ2e/

どれも楽しかったけど、バリ島はお腹を壊して現地の病院行ったら39度以上の熱があって大変だった。体調ってこんなに悪くなるんだ!と思った。シンガポールでは仲良くない父親と案の定よろしくない空気になった。人は家族だからわかりあえるわけじゃない。

 

エステとジムに行ってみた

文字通り。エステはなんかあんまり信用してなかったんだけど、サロンによって結構違いがあることがわかった。ジムは、夏は結構余裕があってコンスタントに通えてたけど、体調崩した後一気に秋から忙しくなってなかなか行けなくなってしまった。おまけに今度わたしの好きなフロアがなくなるらしく、また余裕ができるまでいったん退会する予定。ずっと行ってるアンチグラビティは好きだから少しずつでも行く。

 

高額だけど愛しい買いものたち

今年は大きい買い物を結構した。 
ひとつは絵。大好きな笹倉鉄平さんの『ミモザ』。高校生の時に出会ってから、いつかお金を貯めたら絵を買うぞと思っていたのがようやく叶った。わたしがあまりにもずっと言っていたからか、一緒にいた母も「買えば?」と珍しく言ってくれたのが地味に嬉しかった。

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もうひとつは、きもの。亡くなった祖母がたくさん持っていた中からいくつか形見にもらったのだけれど、着付け教室も高くて、うーんゆっくりいいところを見つけて習おう、と思っていたら、11月中旬、偶然通りがかったきもの屋さんが奇跡的な出会いで、その場で洗える着物と帯や小物一式を買ってしまった。
洗える、というのが個人的には良かった。おばあちゃんの着物汚しちゃうな、みたいな心配なく着られるし、ポリエステルでも全然安っぽくなくて、とても素敵だったから。おだてられるままにトータルコーディネートしてもらって、すごくうきうきした。おまけに採寸してもらっての仕立てだから、おばあちゃんの大きい着物を苦労して着る感じじゃないし、嬉しい。

https://www.instagram.com/p/BOpkN0SAYTh/
なんとそれだけに終わらず、商売上手なそのお店が、新作が入ったり、フェアをやるたびに呼んでくれて、上質で可愛いものを見せてくれるから、その後もう1着買ってしまった。こっちはまだ仕立て中で届いてない。合計するとネイルスクール以来の高価な買い物……!恐ろしいけど、行くたびときめくから、いいことにする。早く苦労なくするっと着られるようになって、いろんなところに出かけたいな。

ちなみにそのお店は本当に痒いところに手が届く感じで、1回500円でマンツーマンの着付け教室してくれるし、そこで着物を買った人たちと行けるお出かけ会もあって、「着て行く場所ないし……」ともならない。すごいよ。好き。
やっぱりお金は、好きなところに使うのがいいね。ジムはやめよう!笑

 これ。DOUBLE MAISONはとにかくかわいい

 

ものづくり

着物とも若干関係して、今年のものづくり。一番大きいのは、染物を習い始めたこと。体験着付教室に行って、どうにも自分は、着ることもいいけど、着物そのものの方が興味があって、この布にはこういう柄が定番なのかな? 菊ってどのくらいの種類あるんだろう? みたいな、友禅、絣、紬、色々知りたいな、っていう工芸品への興味が強くなってしまって、ずっとやりたかった伝統工芸に少しでも触れてみることにした。

https://www.instagram.com/p/BNRhyvegJWe/ 

これがもうめちゃくちゃ楽しい。半年かけて1枚を染めるからまだまだ完成してないけど、どんな風になって行くのか楽しみだし、将来的には帯を染められるみたいだから、自分の帯を染めたいな。

あとは他にもものづくりちらほら。あみぐるみもレース編みもつまみ細工も初めてだったけど結構綺麗にできた!クチュリエ大好き。2017年はオリジナルも作れたらいいな。

https://www.instagram.com/p/BLXdBCfgxHm/https://www.instagram.com/p/BMqnRCygfwQ/

https://www.instagram.com/p/BN-ePNdAenK/https://www.instagram.com/p/BOV0ukHAQ37/

うつわにハマった

個人的にはきものやものづくりとも通じるものなのだけど、「うつわ」にとにかくハマった年になった。一番好きなのは「九谷青窯」だけど、他にも東京蚤の市でたくさんのかわいいうつわに出会って、たくさん買ってしまった! だいたい欲しかった形が揃ってきて、今は落ち着いているから、あとは本当にこれだと思えたものと出会ったときに買い足したい。
なんていうか、こういう素敵なものがもたらす時間や幸福みたいなものをわたしはすごく信じている。料理して、美味しいねって言って食べたい。

https://www.instagram.com/p/BMwHZMPg5Bg/ https://www.instagram.com/p/BLTM8HJAsoq/

映画がとにかくよかった

そして今年はこれがかなり印象的だった。全部で22本見たけど、本当にすごい作品にたくさん出会った。これはまた別に書いておく。やっぱり衝撃だったのはこの二つ。

今年一番お世話になったサービスは、TOHOシネマズのauマンデイと楽天ポイント連携かもしれない……。映画の日である1日、レディースデーの水曜日、TOHOシネマズの日14日以外にも、毎週月曜日1,100円。映画とにかく高いなって印象だけど、見に行ける日が多くて、水曜と月曜はあんまり予定入れないようにしてた。そして楽天ポイントで見られるから、実質無料な感覚。来年もいっぱい映画見るぞ。

 

たくさん舞台とライブに行った

映画だけじゃなく、ステージもたくさん行けた。

《演劇・ミュージカル》

  • イニシュマン島のビリー
  • その日のまえに朗読劇
  • キャラメルボックス「また逢おうと竜馬は言った」
  • キンキーブーツ
  • 娼年
  • 劇団バッコスの祭「水質調査官」
  • 劇団新感線「Vanp Bamboo Burn」
  • 同級生の旗揚げ公演
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とにかく一番良かったのは三浦春馬さんと小池徹平さんとソニンさんの『キンキーブーツ』で、役者さんの存在感も歌のうまさもすごかった。あとは『イニシュマン島のビリー』ではとにかく古川雄輝さんに衝撃を受けた。話題作『娼年』もすごかった。まるでミュージカルの歌のように色とりどりなセックスシーンが出てくる。笑 松坂桃李さんもすごかったけど、応じる同級生の女の子もすごかった。

《お笑い》

お笑いは結構行ったことなかったコンビのライブに行けて良かった。ウーマンラッシュアワーとシソンヌがすごかった。シソンヌは絶対毎回行きたい。

《音楽》

奇跡的に嵐に行けた年。そして初の遠征でチャットモンチー@徳島。KAT-TUNが充電期間を発表し、清竜人25は解散発表という。Perfumeは幕張3日間全部行った。どれも全然違うブロックで、2日目と3日目は結構近くで見られて嬉しかったな。

《その他》

その他では、やっぱり長年の夢だった「THE ICE」。10周年だし!と気合を入れて大阪まで行って見た。大好きなバトルと真央ちゃんのペア。一度生で見たかったから大満足でした。

 

清竜人さんに惚れた

とにかく今年はこの人に振り回され、この人に救われた年だった。ほぼほぼ清竜人だけを聞いた1年だった。最初に出会ったのはこれで、

何この人やばいって思ってどんどん曲を聴いていって、一夫多妻制アイドル「清竜人25」だけじゃなく過去のソロにも辿り着いて、とにかくめちゃくちゃ好きだった。

25に関しては、コンセプトもすごいんだけど、発想だけがぶっ飛んでいるわけじゃなくて細部の作り込みがすごくて、何より竜人くんが作ってる曲がひとつひとつ本当に良くて、最初は何この人やばいだったのがどんどん「誰よりもかっこいい」になっていった。

とにかくハマりまくってインタビューもたくさん読んで、印象に残ってるのはこれ。

アホみたいなことやっといて寺山修司とか読んでるわけです、好きになるに決まってるじゃないですか。

竜人くんなら奥さん50人いてもいいから妻にしてくれ!って思ってしまうもの。笑
ただ、絶対この人相当気分屋だし、いつ25やめます!って言い出してもおかしくないから存在しているうちに追いかけて行かなきゃと思っていたら、本当に言った。

はあ。寂しいけど、あと半年。夫人たちにその後も会えるのかはわからないから、後2回のツアー両方行きます。
ソロも本当に良くて、出会って驚いたのはこれ。わたし3年前に気になってたみたい、覚えてるよこの曲、この人だったのか。

個人的にはソロ曲の中では、このAll My LifeとZipanguが好き。清竜人さんについてはいつかまとめて書きたい。


清 竜人 - Zipangu

 

 

さて、2016年頭に立てていた目標は。 

  • 仕事をいい加減どうにか変化させる →△本質的に変わってはない
  • 痩せる!(……)→△前よりは減ったけど
  • 旅行に行く →○
  • 新しい料理を10こ増やす →△10は増えてない。けど、週末にまた料理するようになってきた
  • 新しく行ったことのない人のステージを見る →◎シソンヌや清竜人25など。
  • 文章を書く →×

なぜか2015年の「きものを着る」をやった年になった。

そんなわけで2017年は、

  • 貯金する
  • きものを着る
  • 料理を10こ増やす
  • 活字本を20冊以上読む
  • 文章を書く

にします。またゆるゆると生き延びていこう。

2017年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

今週のお題「2017年にやりたいこと」

不思議な選択肢の話

今日は絶対超早く寝ます!!なんて言って会社を出てきたのに、ドラマ逃げ恥があんなラストを飾るから、何か書かずにはいられなくなってしまった。エッセイでも小説でもない、昔ブログに書いていたような私事を。

逃げ恥のドラマで何度も出てきたシーンが、最終回にもあった。抱きしめられた後、勇気を持って自分も腕を回す瞬間。そもそも先に抱きしめている人もそのはずなんだけれど、抱きしめてもらった後でさえ、自分の意思を示すことってすごくすごく勇気がいる。

この間、久々にわがままを言った。堂々としたわがままではなく、思わず逃げ出したくなるような本音。言うときに一歩相手に近づくのが、本当に怖かった。

そんなわがままを言ってまで手にしたものなのに、正しかったのかは、全然わからない。将来後悔する可能性は否定できないし、自分より、相手に後悔させないだろうかと思うと、不安になる。誰かをがっかりさせていやしないかと、それだけが気になる。

何が正しいのかわからない場面は、きっと違うところでまた出て来る。次の選択でも、その次の選択でも、そんなことばかりなんだろうと想像する。だけど、決めてしまって、やってみないと、良さも悪さもわからない。経験する前に、幸せか不幸かなんて知れるはずない。だから、仮面浪人のつもりで入学した大学を愛したように、臨機応変に、自分の状況を分析して、我慢せずに素直でいて、挑戦していくしかない。そのための指針を持っていることが、わたしのちょっとした長所ではなかろうか、と思っている。

困った癖があっても、苦手なことが多くても、落ち込むことがあっても、思うように稼げなくても、傷つくような大病になってもいい。とにかく少しでも幸せになりたい。おこがましくたって構わないから、幸せにしたい。人を幸せにするなんて大層なことができるかと言うとわからないけど、そう思っていることだけは大事にしたい。

みくりが初めて自分の小賢しさから許されたように、ずっと相手にやさしくいたいな。何が刺さるのかは他人なんだしきっと外れるだろうから、できるだけ想像するようにする。言葉を並べてしまうのは悪い癖だし、わたしがあまりにも「幸せな方」「嬉しい方」と言うからうるさく思われていそうだけれど。

お土産を買う相手を失いたくなかった。不思議な選択肢から、好きな人といることを選んだ。なんて言いながら、数ヶ月後には全然違う気持ちかもしれない。先のことはわからないよね。

自分一人で完璧になるのは全然難しいことじゃないけど、相手が存在すると、いきなり難しくなる。一歩一歩を適当にできなくなる。そういうステージに立ちたい時期に来た、と思う。最初はそれが叶わないんじゃないかと思ったけれど、形が想定外だっただけだった。

人生は短いから、できるだけ愛情のある時間が流れますように。

どんなモテメソッドも敵わない、いちばん確かな優しさのかたち『富士山さんは思春期』

ハラハラドキドキのバトル、どんでん返し、謎が謎を呼ぶミステリー! そういった起承転結の激しいストーリーがなくても、私たちを魅せてくれる表現がある。ひとつひとつのコマの持つ意味にときめいてしまう、じっくり、じんわりな青春未満を描いた『富士山さんは思春期』(全8巻)だ。

中学生の男女ふたりがつきあって、学校生活と四季を過ごした、それだけの話なのだけれど、これが全く飽きることなく、ページを捲る手が止まらなくなる。

富士山さんは思春期 : 1 (アクションコミックス)

人気の可愛い女子の着替えを覗こうと無茶をしたカンバが見てしまったのは、身長181センチもある大きな女子、富士山牧央の下着姿。女子として見ていなかったのに、その日からドキドキが止まらない……。勢いに任せて「付き合わね?」と言うと、富士山さんもOKしてくれて、ふたりの彼氏彼女としての毎日が始まる。 

一瞬一瞬の描写が、汗のはりつく感じや距離が近づいたときの熱まで感じそうなみずみずしさ。中学生のカンバの目線で描かれているぶん、若干のエロ目線はあるものの、とっても爽やか。

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(1巻46ページ)

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チラッと見える背中とお尻(1巻159ページ)

最初はこの視点のリアルさや、描写の健康的なエロさが魅力なのかと思っていたのだけれど、この作品はそれだけじゃない。本当にすごいのは、富士山さんとカンバの個々の特徴が全編に滲み出るように描かれていることだ。

富士山さんは、待ち合わせ場所にされるほど大きくて、バレー部のスーパースター。それに対して、カンバはどちらかといえば小さくて、顔がいいわけでも部活で活躍してるわけでもなく、何かに熱中しているわけでもない、平均的な中学生男子で、スペック的特徴はあまりない。そのカンバが、富士山さんとつきあっていくために、相手の特徴のこと、相手の気持ちのことを、「女子」という大きなくくりでも、モテるためのマニュアルでもなく、必死に考えていく。

「大きいね!」と声をかけられたときに、心配してチラリと表情を伺う。
映画もボウリングも服選びも体が大きくて楽しめないと言われたから、帽子をプレゼントに選んでくる。
幼少期、滑り台で遊ぼうとしたら「小さい子に譲りなさい」と言われたと聞いて、相合傘を持とうとする。
立派なお寿司を見て出せずにいた差し入れのおにぎりを「腹へった」と食べる。

自分が取れない高い場所にあるものを富士山さんにとってもらう時なんかは、カンバも悔しそうにするけれど、彼は自分が負けて嫌だからというよりも、何倍も何倍も多く、常に富士山さんを気遣っている。それが押し付けがましくなくていい。一緒に楽しみたい、好き、そういう混じり気のない気持ちが根底にあるからこそ、地に足をつけて優しい。

最初はカンバも、同級生に「富士山はナイ」「女じゃない」と言われて好きになることをためらっていたけれど、一度彼女と向き合った後の彼は、なんのスペックもなくても、本当に本当に、世界一かっこいい。相手の状況や気持ちを考えて行動する、それひとつだけで、優しさが行動になるんだなと思える。車道側を歩こう、プレゼントは喜ぼう、すごーいって褒めよう、毎日好きだって伝えよう、そんなふうに教えられてやることなんて、きっと本当に伝わるものではないのだ。

 

一緒にいたいと思うふたりの過ごすピュアな時間と、日常に隠れた喜びは、ひとつひとつのときめきがすごい。同級生たちと花火を見ながらこっそり繋いだ手や、一緒に委員会に入ろうという約束。合宿でベランダとベランダで少しの時間だけ話す夜。どのシーンも捨てがたい。
一緒にテスト勉強したところが出るとテスト中に「あっ」て思う。

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(2巻142ページ)

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(4巻46ページ)

もらった絆創膏が濡れないようにお風呂に入る。

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(3巻153、158ページ)


こんな時代あったなあ!あっただろうか!! あった人もなかった人も、このふたりには思わずほっこりするはず。わたしの中では確実に殿堂入りの作品だ。

お話は中学3年生の夏で終わるが、中学生の恋は、ほとんどが大人まで続かない。そんなことをチラリと考えてしまいつつ、このふたりがいつまでも一緒にいてくれたらいいなと思うし、きっと、お別れが来てもふたりらしいやりとりがあるんだろうなと思うと、それも思春期かあ、と思ったりする。8巻読み終わる頃にはすっかり、どこかで生きているような気がしてしまっている。

まだの方はぜひ!

作者・オジロマコトさんの今の連載はこちら。 

 

この夏のわさび活動が大変満足だったことを報告します

小さい頃から「好きな食べ物は?」と聞かれるたび困っていた。 トマトは好きだったけど、一番か? と聞かれると困ってしまう。我が家では誕生日に好きなものを作ってもらえたけれど、弟がいつも「餃子」と即答する中で(もはや途中から聞かれてすらいなかった)、わたしは毎回困りに困り、「一番でもないんだけど」と思いながらハンバーグなんかを頼んでいた。

そんなわたしが、大人になって気づいためちゃくちゃ好きなものが「わさび」だ。わさびの味の商品を見ると健康も何もかも度外視して即購入する。この夏はわさび味のものがすごく増えてとても充実した日々だったので、それを羅列しておく。どうか来年も出ますように。

 

かっぱえびせん わさび味

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普通のかっぱえびせんも美味しいけれど、それ以上にやめられないし止まらない。

 

夏ポテト わさび味

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最高。

 

和びーの わさび塩味

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株式会社 東ハト/商品カタログ/ビーノ

普段からビーノをよく買うわけではなかったのに、2回も買った。

 

ハッピーターン 大人の梅わさび味

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32g ハッピーターン 大人の梅わさび味|ハッピーターンスペシャルサイト

言っても太りたいわけではない。そんな時にちょっとの量で売っているのが嬉しい。他にあまりない梅との組み合わせも嬉しい。最高。

 

ファミリーマートおむすび あおさご飯 わさび海苔

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www.family.co.jp

わたしは、ご飯がわさび味でお菓子もわさび味でもいい。最高。

 

最後に、期間限定ではない、わたしの中で殿堂入りしているわさびのお菓子を紹介する。

わさびふわり

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わさびふわりチーズ | あられの松福

わさびふわり 1ケース 12袋入り

わさびふわり 1ケース 12袋入り

 

これは口あたりもよくておせんべいも美味しくてチーズとの相性もよくて、食感も辛味もまさに「ふわり」という感じでめちゃくちゃ美味しい。近所に売っていればいいのに。知っている限りでは巣鴨の駅のお菓子屋さんにあるので近所の方はぜひ。

 

あと2、3点はわさびのお菓子をたべた気がするので、全部記録しておかなかったのが残念でならない。
大人になって、食べ物にも「目が無い」というものが出てきた。わさびの他は、茄子とキウイが該当して、含まれるメニューがあると気がつくとそれを注文している。そうすると楽しくなる。自分の機嫌を操れるって最高だ。夏以外もわさび商品が少しでも出ますように。