物語のなかをぐるぐる廻る

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編集領域を拡張する案をひとつ提案せよ

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最後から2回目、実質個々のゲストからの課題は最後という回は、AR三兄弟の川田十夢さんでした。課題は以下。

【課題】
「編集領域を拡張する案をひとつ提案せよ」

参考例は以下、
例えば、僕の知り合いの佐渡島庸平という男は、
宇宙兄弟をヒットさせるために美容室に無料で単行本を配ったそうです。
センスを委ねている美容師が「おもしろい」と勧める漫画を客は無視できないという計算のもとでです。
これは、結果的に試し読みの本棚の拡張ですよね。
こういう編集者ができる編集領域って、無限にあるのだと思うのです。

 

これは今までである意味で最も難産になった回で、というのも、この佐渡島さんの例で言われているようなことはむしろわたしの普段の仕事のメインにくるようなことで、「工夫」というよりは普通の日常だったから。これを「編集者」がやったというその発想の柔軟さがすごいのだけど、営業としては通常運行という。おかげでその眼鏡でしかなかなか見られなくて、ずっと「う〜〜〜ん!」って考えている状態が続いていました。

佐渡島さんの例が「戦略的に売ること」だとしたら、他の「編集者がやるには意外な戦略」はなにがあるだろう、と考えていて、

  • 著者となるブロガーさんのPVアップを手伝う
  • 映像化をかけあう
  • タイアップを考える
  • 小説家や漫画家の養成スクールをやる
  • 著者によるトークイベントや講演会等を行う

などなど……いろいろあるけど、もう全部やられてるな、ってところがつまづきポイントで、意外と編集さんがやる領域の広さを知っているだけに無邪気にアイデアを出せなくて困り果てて、脳内が真っ白、という時間が一番長かった課題でした。

それでもなんとか発表に持っていくにあたって、決めたのはふたつ。まずは、「編集は、戦略、みたいなものだ(と定義する)」ということ、もうひとつは、ここまで自分の仕事に近いお題がきたのだから、思いっきり自分の仕事をぶつけてみるということ。出したのは、「流通すら変えるような企画を出す」という意味合いで、「海外で出されている翻訳本を日本のISBNを付与できる企画として通すことで外国人向けの販売を狙う」というものでした。

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ところが、評価的には、最後なのに惨敗。笑 でも今回は、その惨敗が悔しいかというとちょっと違う意味の感情が残りました。

例えば講評で、

「ニューヨークなんかに比べると日本にいる外国人はまだまだ少ない」って言われて、「いやニューヨークと売り上げ競争するわけじゃなくて手間かけずにパイを広げようって話なんだからその比較なんの意味が」とか、

「同じように外人向けに本を売るならロシア料理店でロシア料理の本を売ったほうが面白い」って言われて「そもそも外人の数少ないって言っててロシア料理店っていうさらにニッチなところはどう考えてもさらに数少ないよ」とか「だいたいロシア料理の本自体がそんなにない」とか「結局書店の番線を持っていない以上1店1店と直販になって手間ばっかりかかるでしょ」とか、

「そーじゃないんだ!!!」と思うことがたくさんたくさんぐるぐるして、でも流通の知識を深める回じゃないし、時間も限られているので、その反論は全部胸にしまいこんで。

「知識があるからこそ不可能なことや効率が悪いことは全部排除した上で今の流通を生かす一番いい方法を提示してるのに通じなくて悔しい」って気持ちと、「ああここにいるトップクラスのふたりよりも、書籍流通ならわたしのほうが詳しいのかもしれない」っていう妙な誇りが入り混じって、すごく不思議な気持ちになった回でした。

 

もやもやしすぎて飲みに行く気にもならなくてひとりでちょっとだけご飯を食べて帰ったら、受講生のひとりのお姉さんがメッセージをくれて。それがめちゃくちゃ嬉しかった。悔しさと誇りを同時に感じたことがあるって言ってくださって。

営業の立場から編集にぶつけるっていう

今日の意気込みがカッコよかったので、 連絡したのでした。

丁寧な長文の最後にこう書いてあって、あぁ結果は失敗でも、よかったな、最終回も頑張らねば!なんて現金にも思ったのでした。

いつも、友達ができないのがわたしの悪いところで、だから、友達なんて言い方をすると失礼かもしれないけど、気のおけない仲間みたいな人たちができて、基本大勢で飲むのが好きじゃないのに苦痛に感じなくて行きたいと思えて、なんだか、この出会いだけで1年間やってみてよかったなと思った日でした。

 

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