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『リップヴァンウィンクルの花嫁』の幸福

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岩井俊二監督・『リップヴァンウィンクルの花嫁』を見た。4月14日、渋谷ユーロスペースにて、18時半の回。とても好きな映画だった。

 

すごくよかった。できることなら騒音なんて浴びず、満員電車にも揉まれず、少し静かな夜の街を歩いて帰って、そのまま寝てしまいたくなるような映画だった。ふわっふわの布団と広いベッドがほしい。

お酒を飲むことも、ワイルドに盛り付けた料理を食べることも、庭の水やりも、こんなに違って見えるなんて。ひとつひとつのシーンを新鮮に見てほしいから、少しでも喋るとネタバレになりそうで話せなくなる。あのねあのねって言いたくなるいい作品と黙っていたくなるいい作品があるとしたら後者だった。

 

黒木華さんを好きになった。好きになりすぎて、黒木さんが頷くであろう場面で一緒に首を動かしてしまった。好きになりすぎて、背中や腕をずっと見てた。白くて透明で、細いのにふっくら丸みがある肌。笑うとかわいい、笑ってほしい、ちょっと頰が上気して楽しそうにしてるのが本当に愛しく見えた、髪を結うのも好きだし無防備におろしているのも好き、触りたい。声がとても耳に心地よくて、何度も出てくる彼女の「ありがとうございます」が純粋でまっすぐで、好きだった。もうこれは恋だった。

 

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3時間は全く長く感じなかった。もう終わっちゃうの? とすら思った気がする。空気自体が好きだ。色、アングル、表情や質感の切り取り、静かに鳴り響くクラシックの名曲たち。見終わった後、帰り道を歩きながら、いろんなシーンがよぎった。カラオケのシーンがとっても好きだった。黒木さんの声。Coccoさんの歌。式のシーンの真白さんの表情が離れない。あんなに美しい瞬間はない。楽しくて、無邪気で、あまりに美しい大切な日。幸せだから死ぬのか、幸せだから生きるのか。寓話の中みたいな、にせものみたいな時間こそが、彼女にとってのほんものだという不思議。

浮気とか、性とか、お金とか、そういうものを扱っているのに、どろどろしたり暗くなっていなくてよかった。不思議だ、こうやって言葉を並べると驚くほどかけ離れた下世話なものに見えるほど、『リップヴァンウィンクルの花嫁』は純文学や異国の旅みたいだった。

 


リップヴァンウィンクルの花嫁 (2016) 映画予告編

 

もう一度見たいけど、映画館じゃなく、Blu-rayがいいかもしれない。DVDじゃなくて、Blu-rayで、ちゃんと綺麗な映像で見たい。静かな時間に家の中を暗くして、ベッドでふわふわした暖かい布に包まれながら見る。ひとりより、女友達か恋人と見たくなった。1度目なら、ひとりで見るのがおすすめ。

好きな映画ベスト5に入った。はじめて、映画監督で「この人の作品を全部見たい」って思った。映画のことが少しわかった気がして嬉しかった。

 

映画はすぐに手に入らないところがもどかしいなあ。本だったら、好きなシーンだけを繰り返し捲ったりできるのに、映画は熱量のあるうちに反芻したいと思ったらもう一度足を運んで最初から最後まで見るしかない。早く手元に置けるようになりますように。きっと何度も思い出す映画になる気がする。

rvw-bride.com

Bride-wedding scores for rip van winkle-

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リップヴァンウィンクルの花嫁

リップヴァンウィンクルの花嫁